自分用の備忘録

吸引ファンの設計

 この記事はMicro Mouse Advent Calendar 2019の23日目の記事です.

 昨日は,なぽまるさんの「誕生日のおはなし」でした.お誕生日おめでとうございます!
からくり工房I.Sys と同い年で,記念すべき20周年目の部長を務めるとは運命めいたものがありますね.

 はたして幣サークル,東京理科大学 Miceは20周年を迎えることができるのでしょうか.遅くなりましたが,はじめましての方は初めまして.Miceの前部長でしたmakotoです.

 今日の話はマイクロマウスの吸引ファンの設計についてですが,たいした中身はありません.

 読んでいただける方がいるならば,しばしおつきあいください.(明日のアドベントカレンダーの紹介までスキップ!)


 マイクロマウスを速く走らせるためには,吸引ファンがあると嬉しいです.吸引ファンの有無で目標速度や目標角速度への追従性が違ったり,急激な加減速時のスリップによる距離ずれが少なくなったりします.でも吸引ファンの作り方について述べているブログは意外に少ないです.なので,少しでも技術的なことが書ければいいなと思ってこのタイトルにしました.流体力学に基づく何か定量的なことを書こうといろいろ考えましたが,無理でした.なので主観で書きます...

[参考]吸引ファンについて述べている先行ブログ
http://hidejr1053.web.fc2.com/vq2.html

吸引ファンとはそもそも

 吸引ファンは掃除機のノズルを地面に向けるようにしてダウンフォースをえるためのものです.遠心ファンを取り付けて,モータの軸トルクを流体(空気)に与え圧力差を生み出します.一般に遠心ファンのような流体機械の性能は以下のような性能曲線で表します.流量(横軸)が変化したときに,圧力差(ポンプなら揚程)や効率がどのように変化するかを示したものです.流量Qを決めるとその時の圧力差Pや効率ηがわかりますね.しかし,この曲線は回転数が(ほぼ)一定で実験されるものです.同期モータを使って一定回転数で運用する機械ならこれで十分ですが,マイクロマウスのファンは回転数が不定の変数なので,独立変数が2つ(例えば回転数N,流量Q)あることになりますね.

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性能曲線の例

 ファンには遠心式,斜流式,遠心式があります.後ろに向かって流量が大きくなるのですが,マイクロマウスのように流量が小さく,圧力差や揚程を生み出すことを目的とする場合,効率のよい遠心式を使用します.

オープン型,クローズド型

 側板があるかどうかで羽根車は以下に分類されます.

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 製作しやすいのがオープン型で,3Dプリンタで製作するならクローズド型も可能ですね.オープン型の場合,基板を側板として使っていますが,クローズド型なら羽根車を基板から離すことができるので十分に離せば,ファンの下にも部品が置けるという利点があります.羽根車をかなり高回転で回転させるので,軟らかい素材では遠心力でファンが横に広がります.強度についても側板のあるクローズド型の方が強いです.

羽根の出口角度

 出口のファンの周方向との角度で3つに分類されます.

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 損失を考えなければ流体の角運動量変化大きいほどファンは仕事をするはずなので,前向き羽根の方が羽根から受けるエネルギーは大きいはずです.流体のエネルギーは動圧(流速)と静圧(圧力)のどちらかになりますが,後向き羽根の方が静圧に変換されるエネルギーの割合が大きく,圧力差に寄与するエネルギーを考えれば後向き羽根の方が効率がよいです.一般のポンプ・送風機は後向き羽根を使用し,送風機の場合,30°~50°の例が多いらしいです.

羽根枚数

 (理論的には無限大が理想ですが)5~8枚くらいで,たぶんそんなに差異は生じない気がします(主観).

ファンの揚程・流量と回転数,大きさの関係(相似則)

 揚程(圧力差)は大きさの2乗,回転数の2乗に比例
 流量は大きさの3乗,回転数の1乗に比例

 圧力差を大きくするためには,大きさ,回転数を上げればよく,大きさはマイクロマウスの設計上の制約が大きいので,高回転のモータに高電圧をかけて圧力差を得る方が簡単です.下手に羽根車の径を大きくすると,必要なトルクが大きくなることで回転数が落ちてしまう可能性があります.

結局どう設計すれば最適なのか

→分からない.

 先に述べましたが,吸引ファンの独立変数は2つ(例えば回転数N,流量Q)です.運転しているときはほぼ定常な状態に落ち着いているわけですが,その作動点は,スカートを含めた管路の抵抗曲線(流量と圧力損失の関係),DCモータの特性曲線との関係性の中で決まるはずです.

しかし,管路系の抵抗曲線,DCモータの特性曲線がわからないので,結局作動点は実験しないとわからないと思います.

なので,方針としては,
・最適なファン形状ははわからないので無難なファンを作る.
・回転数を上げる
・スカートの気密性をよくする
という結論になるんだと思います.

 小型のモータは発熱が著しく,そのためにdutyをあまり上げられないので,duty=1で使うためにモータの発熱をどう抑えるか考えた方がいいかもです.

スカートの例

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 これがよいというものではないです...
 スカートは1次スカート(黒い部分)と2次スカート(半透明な部分)から構成されます.1次スカートは適当な厚めのテープを,2次スカートは適当な袋にPTFEテープを貼ったもので作りました.1次スカートは床面と2次スカートを擦らない程度に近づける.2次スカートは管路に抵抗をもたせて,密閉する役割があると思っています.

スカートはあささんなど強い人のブログにによく書かれているので参考にしてみてください.あささんも書かれていますが,スカートをつける場合は車高を考えて設計しましょう.僕は僕は一週間前にスカートが擦るようになってしまいやむなくタイヤを交換する羽目になりました.

最後に

 非常にまとまりのないブログとなってしまいました.申し訳ありません.有用そうなサイトのリンクを貼っておきます.
遠心ファン設計計算 | 学べる探せる設計技術

リンク先は遠心ファンの設計についてのものですが,このような設計をする場合,通常は回転数Nと流量Qとモータ出力L等があらかじめわかっている場合を想定しています.
(計算内容の詳細な説明はこちら)

回転数はモータのKV値とdutyから大体の値を入れれば設計できるかもしれません.現実的な流量Qが確保される範囲内でオイラーヘッド(全圧力P=ρ*g*オイラーヘッドHth)が最大化されるようなパラメータがファン単体の性能としてはよさそうです.

再設計する方はもとのファンの回転数を実測するのがいいかもしれませんね.

もし,何かよい設計法があればおしえてください!(丸投げ)

明日のアドベントカレンダー

もすさんの「壁センサについて」です.ちょうど今,Miceの新入生むけステッパーマウスを設計しているので参考にさせてもらおうと思います.

参考文献

ターボ機械協会編.ターボ機械入門編.新改訂版,日本工業出版,2005.